絵を描き始めたきっかけは?
絵を描くのが好きで何かしら描いていたように思います。幼稚園の頃は繰り返し良くカブトムシを描いていたことを覚えています。小学5年生の時にクラスメートに油絵を習っている者がいて、どうしてもやりたくて絵の教室を紹介されて通いだしました。その教室は高校3年まで通いました。
これまでに強く影響をうけた画家はいますか?
W(ダブル)山口ですね。半抽象の山口薫に初めは興味を持ちました。百科事典の別冊美術版に「田園詩」の図版が載っていて、不思議に魅力を感じました。美大に入ってからは半抽象的な表現に憧れて絵を作ってみたりしましたが、中途半感じになったり、中々難しく、抽象的な傾向が強くなり、山口長男などを良く見るようになりました。
作品を制作する際にはいつも何か先にテーマを設定するのですか?
いつもではないし、漠然とあった時もあると思います。テーマをテーマとして明確に設定するようなったのは近年です。
最初に真っ白なキャンパスに向かう時、どのようにどこから始めるのですか?
何を描くか決まっていない時は、ただパレットに使いたい色や手にに取った絵の具をまず搾り出します。
それから、パレットに残しておくのが勿体無くなるので画面に絵の具を付けてみます。そんなことから制作が始まることは多いです。
作品を仕上げて筆を置く時はどのような気持ちで置くのでしょうか?
作品を仕上げるというよりも、これ以上手を入れると作品が良くなくなると思えた時です。
これまで、「風」や「光」「水」など自然のなかにあるものがモチーフやタイトルに現れていますが、生まれ育った場所であり、現在もアトリエのある千葉にいることが関係していますか?
それは大いに関係があることだと思います。
今回の個展では「背景」をテーマに作品が描かれています。「背景」に視点を向けて取り組んだ過程には何があるのでしょうか?
前々回の個展(2010)でのテーマが「net」でした。具体的には少年の頃見た霞網がモチーフであり、それが全体のコンセプトになっていました。過去の記憶がモチーフということはそのこと自体が私的な経験の背景です。思い出さなければ忘れられていた遠い過去の風景です。ですが、今回の展覧会の準備段階で背景は過去や遠くに感じられるものだけでなく、今現在でも自分の側や、周りにあるものだと思った時に背景自体を問題意識し、これをテーマにと制作の動機にしました。
「背景」を意識した今回の制作を通して、これまでの制作との変化などをどのように感じましたか?
基本的には、画面の中に入る形等が矩形にどのように関係するのかが常に気になるのです。それでも今回は今までよりも四角い空間を自由に感じ、キャンバスにのる絵の具はより繊細に大胆に使えたように少し思えました。
出品作には、紫色のようなこれまでにあまり使われてこなかった色の作品もありますね。
明るい色彩を使いたい気分でなかったことと、背景ということを考えたときにあまり強い色彩はしっくりこないなと思ったことも影響していますかね。結果的には渋めの色味が多くなりました。
少し落ち着いた気分で絵を眺めていたように思います。
かなり小さなサイズまで、小品も数多く制作されていますが、小品を作ることの意味合いはどのようなところにありますか?
手の中で出来ること。
次へのささやかな挑戦。
制作の設計。
経験の確認。
余った絵の具の行き先。
吉川さんにとって描くこととは?
僕にとって絵を描くことは生きていくことの背景なのでしょう。自分の作品が残るとしたら、僕のしたことは、作品の背景に意味として感じられることなのだと思います。
--- 終 ---