PAINTINGS THAT SEEK EACH OTHER

March 25–May 20, 2023

  • Tuesday – Saturday 11:00–18:00 Calendar
  • Closed on Sunday, Monday and National Holidays
  • Closed on April 29, May 3–5
Yakushigawa Chiharu
好一対の絵

薬師川千晴

つがいの絵画

2023年3月25日–5月20日

  • 火–土 11:00–18:00 カレンダー
  • 日 月 祝日(4/29, 5/3–5) 定休

息をする。
吸って、吐いて、対の呼吸を繰り返す。
私たちの周りにはあらゆる対の関係性が存在する。自己と他者、善と悪、あちらとこちらなど、様々な二極が存在している。
それは双方が対峙し合いながらも、常に互いが互いを必要としているのではないだろうか。
対の関係は二つで一つとなる番(つがい)
私はこの世界に散らばる番の関係性を絵画を通して思考する。
吸って、吐いて、絵画の中で呼吸をするように、身体を通して世界と関りたいと思う。
薬師川千晴


作品解説

四肢の絵画

両手両足に異なる絵具を付け、画面上に四肢で立ち、色を混ぜ合わせる。古典技法である練り込みテンペラと、荒い粒子の顔料を使うことで四色の交わる境界線は互いが互いの粒子へと入り込み、個と個の粒子が共存する中で、混ざり合う。その関係性は私達の社会や人間関係にも当てはまるのではないだろうか。それぞれの境界線は互いに受け入れ合い混ざりながらも決して完全に混ざり合いひとつになる事はなく、両者は互いを共有し合う。

Knock

手に絵具を付け画面にコンコンとノックし、その痕跡を残す。ノックとは、相手の領域に入る前の合図であり、向こう側にいる相手へこちら側の存在を知らせる配慮の行為となる。SNSの発達により、個人の領域に入るハードルが極端に下がったこの世界で、今一度、このknockという行為について思い見る。

絵具の引力

一つの絵具の塊を二つに分ける。そうして出来た作品は、人が祈るときに合わせる手にどこか似ている。そもそも、人はなぜ祈る際、手を合わせるのだろう。思うに、手を合わせる事により、人は〝何も持てなくなる〟ことが重要なのではないだろうか。それはつまり、何かを抱える手段である手を天へ差し出し、物質世界とは離れた位置から〝祈り〟という非物質的な行為へと移行する、ある種の儀式の様なものなのだろう。

好一対の絵

二枚の支持体を用意し、交互に筆跡を置いてゆく。片方を見ながら隣に何色を置くか考え、どんな線を引くか考える。そしてまた加筆し、また隣へ戻り、二枚の絵は同時に完成してゆく。そうして出来た絵は互いに影響し合い、片方ともう片割れという関係性が生じる。この互いの関係性は、互いに交わることはなく、個が個として自立している中で、ただ、隣り合う。

好一対の絵 #対話

透明なアクリル板を支持体に、表も裏もないその両面から絵具をのせていく。片側の筆跡に応えるように両側から筆跡を重ね、対話するように画面は出来上がってゆく。透明なアクリル板は両側の筆跡をダイレクトに反映する。しかし、対話を重ねるほど、奥にある片側は見えづらくなる。この絵画は、全てが見えているようでも、常に片側からの視線でしか捉えることができない。