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November 13 – December 25, 2010

 

Kusaka Junichi
日下淳一 「電飾打掛スーツ」© Akira Kobayashi

日下淳一

インターフェース 展

2010年11月13日–12月25日

 

日下淳一は、1994年以来、「衣」をテーマとする作品を中心に制作し、自立したアイデンティティを探求し続けてきました。これまで、囚人服を連想させる縞模様のビジネススーツやタオル地でできた「湯上りのスーツ」など外観と精神の関係性や風刺・ユーモアを織り込んだ「衣」作品を発表しました。アーティストユニット「アイディーブティック」としての活動も含め、鎌倉画廊での個展は5回目となります。

「インターフェース」(異なるものを結びつける共有部分・界面・接触面)と題した今展は、「衣」に留まらず、作品生成に至る作家の多面的な考察を、衣装作品、タブロー、そして初出の箱作品を通して垣間見る初の試みでもあります。「衣」の代表的作品「電飾打掛スーツ」は、日本の伝統的な花嫁衣装である白無垢や色打掛を紳士用詰襟スーツに仕立て直し、全身に400-500灯の高輝度LEDを取り付けたものです。日下はここに性(男性・女性)と時空(伝統と先端技術・洋の東西)、生と死(結婚と戦争)が渾然一体となる交差を表現しており、この電飾スーツを作家自らが着用しパフォーマンスを行うことで、人と人の交流を生み出し、「インターフェース」として提示してきました。

今展では「電飾打掛スーツ」6点に、白無垢とオーガンジーで仕立てた新作の「電飾ドレス」1点を加え、電飾衣装の雅やかなインスタレーションとして展示します。また、コーヒーを輸送するための粗織りの麻袋(ドンゴロス)を用いて仕立てた新作の「ドンゴロスーツ」2点を初公開致します。粗末な衣装を意味するドンゴロスのスーツは、電飾スーツの雅やかな世界と対峙する“侘び”の世界を表現し、その対比も今展の意図するところです。また、「衣」の制作における縫製技法や材料を応用したタブロー「フィードバック」シリーズは、もともと油絵を学び、多様な表現の原点が「絵画」であると言う日下が、これまでの過程で見出した結果=「衣」を、原因=「絵画」に反映させるという意に基づいて制作してきた極めて独自性の強い作品です。ジャケットの胸ポケット部分をキャンバスの木枠に張り「収納」という実用性を持たせたタブローなどを制作してきました。

今展では、白無垢に仕込まれたLEDライトが描く「電飾絵画」、コーヒー麻袋「ドンゴロス」のタブローやフェイクファーのタブローなどを展示致します。さらに、「衣」が対外的である一方、作家個人の内面を思索し続けてきた「箱」の作品も初出展致します。「物質と現象、機能と存在、内部と外部・・・箱を通じて意識の連鎖が引き起こされた」という日下が行き着いたのは“決して開けてはならない”パンドラの箱。思索の過程が凝縮され、機能や痕跡、現象が封じ込められた一連の箱作品は、見るものを見つめ返し、内と外、表と裏を反転させながら問いかけてくるかのようです。「衣」「タブロー」「箱」を通した多面的な表現の中に相互の強い関係性が存在し、その考察が連動(=インターフェース)する展覧会を体感して頂けることと思います。ぜひご高覧下さい。

Kusaka Junichi
「フィードバックNo.18 #1」2010年 60.6 x 60.6 cm 白無垢の生地・木枠・LED他

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