小川 信治 「世界線の眺望」 2013.5.25(土)-7.28(日) |
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小川信治(1959?)は、目に見える現実世界だけがあり得る(あり得た)世界ではないことを、その精密な 描写技術をもって鑑賞者になげかける作品を作り続けています。94年よりフェルメールやダ・ヴィンチなどに よる名画の画面から主要な登場人物を消去して描き直した「Without You」シリーズを発表。私たちの記憶 にある人物の不在からは、別の世界の存在を感じることができます。その後も、古い絵葉書や写真をもとに その中の人物や建物を一画面に二つ並べて描く「Perfect World」シリーズ、絵画や写真を筒状に丸めて 左右の両端を繋げ、もとの中心を切り開くことで画面の主役と背景が逆転することに着想を得た「Behind You」シリーズなどを手がけ、鑑賞者を別世界へと誘ってきました。これらのシリーズは油彩や鉛筆で描か れますが、名画を元に細部まで再構築する緻密な描写力はもとより、古い写真に見られる埃やピントのズ レまで描ききる繊細な鉛筆画は写真かと見間違えるほどです。今展では、各シリーズ最新作の油彩画と 鉛筆画を中心に約10点を展示致します。タイトルにある「世界線」は物理学用語からとり、ある時点で起こ る事象が連なって線となり、時間軸上を世界が移り変わりながら未来へと収束していく軌道のようなもの で、我々は一つの世界線上にいて乗り換えることはできないと考えられています。「現実世界を改変し同 時に存在するであろう別の世界の可能性を示したい」という小川作品と対峙することで、異なる世界線を 眺めることができるのではないかという主題がタイトルに込められています。「私たちはまだ他の世界線を 知らずに世界の可能性の一部しか知らない」という感覚を共有する糸口になるのではないでしょうか。豊 田市美術館(2002)や国立国際美術館(2006)での個展をはじめ、近年ますます評価の高まる作家の新 作展をぜひご高覧下さい。 作家略歴 会場風景
若手作家も含む国内・海外作家の作品を展示いたします。 |