Pathos

Solo Exhibition

September 6th – October 19th, 2014

「Pathos VI」 2012 59.0x66.5cm Photography: Ito Tokio
“Pathos VI” 2012 59.0x66.5cm Photography: Ito Tokio

Yanagisawa Noriko studied under Hayashi Takeshi and Komai Tetsuro at Tokyo University of the Arts. Her representative works are copperplate prints, paintings that are drawn in Chinese ink, charcoal, stone pigment... and combined one as collage. One of the theme the artist keep drawing is our body. She has been trying to express spiritual things through drawing bodies. She often draws animals, birds, and plants those are sometimes become a part of human body. It shows her reverence for nature and life of all creatures. Her works are composed of “fragments” that gathered by her concerned with nature and human, primitive culture and modern civilization, animistic elements... those become a metaphor or media and the works become like poems. Recently, not only domestic museums but also foreign museums held her solo exhibition, for example Portugal, Romania, Israel, Bangladesh and etc. Last year, two museums in Shizuoka Prefecture held her solo exhibition at the same time. At this exhibition, 20 works included her latest works (copperplate prints and mixed-media paintings) will be on display.

柳澤紀子 

Pathos

2014年9月6日–10月19日

展覧会概要

柳澤紀子は東京藝術大学で画家・林武氏に師事し、大学院在籍中にかけて版画家・駒井哲郎氏より銅版画の指導を受けました。その作品は、銅版画をはじめ、和紙を支持体に岩絵具、墨、木炭などを用いたペインティング、さらにそれらを合体しコラージュを取り入れたものなど様々な技法・素材で制作されています。

作家が長く描き続けているテーマのひとつは私たち人間の「身体」です。太古より受け継がれてきた記憶を受け止め、変わりゆく現実社会に晒され、喜びも痛みも抱え込む器のような身体。作家は目に見える身体を通して目には見えない精神を見つめ、表現することを試みてきました。その身体は包帯のようなものに巻かれていたり、部分を欠いていたり、ごく一部分のみで描かれていますが、そこには静かな生命力が感じられます。そして同時に多く登場する動物や鳥、植物は、人間の身体と重なり、時には一部となって、生き物すべてが命の源泉であるかのような視点を思い起こさせます。

近年では、とりわけ狼が描かれていますが、作家にとって「この地上で賢く、美しい存在」である狼に対する畏敬の念から、3年前の東日本大震災後には天災・人災に見舞われる世界、また依然として争いや貧困の続く世界で強いものへの恐れのように狼が現れてきたといいます。また、身体とともに度々描かれる翼は、天女の羽衣のように上昇していくものへの憧れや自由・希望の象徴である一方、うまく操れなければ落下するほどの重みをもつなど、作家が実に多様な意味を感じ惹かれ続けて描いてきました。自然と人間、原始と文明、アニミズム的な要素など、それぞれの作品は作家がすくい取ってきた「断片」が媒体となりメタファー(隠喩)となって一篇の詩のような魅力を放っています。観るものは様々に想像を膨らませることでしょう。

発表の場は年々広がり国内はもとより、ポルトガル、ルーマニア、イスラエル、バングラディシュなどの美術館でも個展が開催され、昨年は静岡県の2ヶ所の美術館で大々的な個展が開催されました。今展のタイトル「Pathos(パトス)」は、ギリシャ語で情念や感情などを意味し、さらには苦悩や死、キリストの受難などを表しますが、作家は言葉の持つ“裏合わせ”の力を感じるといいます。苦悩の先や死の裏には希望や生・エロスへの情熱があることがここには含まれています。今展では最新作を中心に銅版画や混合技法の絵画作品およそ20点を展示致します。創造的な世界でありながら現実からも目を背けない姿勢―その両面が重ね合わされた作品群を是非ご高覧下さい。

Top »