リンクする精神・リンクする芸術
山本圭吾

 20世紀は、耳の拡張としてのオーデイオ、目の拡張としてのビデオ、
頭脳の拡張としてのコンピュータが誕生した。これらは「人間の頭部
の拡張」である。それらが、人間の手足までの「神経系にも拡張」した。
さらにインターネットに代表されるように、「人間と人間の間(社会)にも
拡張」し、単体的であったコミュニケーション・メディアがリンクし、融合化
して新しい「ネットワーク社会」を誕生させ、政治、経済、教育、文化など、
さまざまな分野に大変革が起きている。
 これらはメディアの特性からの視点だが、リンクの精神や思考法も生まれ、
芸術の分野にも発展して、新しい芸術の花が開くと考えている。そこで私たち
は、このネットワークの双方向性、共有性、融合性、変換性、パーソナル性、
同時性などの特性を活用し、時代精神を反映した『ネットワーク芸術』の開拓
をめざしている。
 私は、すでに幾つかのネットワーク芸術の新分野を開発してきたが、その
開発で特に感じていることは、21世紀の芸術のリンク形態が、「数珠」のような
ヨコ型に変わってきたことである。特に、東西の文明がそれぞれ違った特質を
もちながら、対等な関係になり、あらたな「リンクの思想」が成長してきている。
情報ネットワークの『出会いからリンクへ』のプロセスにおいて、その根源的な
本質と深く関わっており、アイデンティティーが非常に重要になる。
文明はシルクロードによって双方向に交流し、多大な恩恵を受けたが、21世紀
は情報ネットワークによって、多方向に新しい文化や文明を生むのである。
新しい芸術もまた。

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