1942年名古屋市に生まれ、1963年シカゴ美術大学へ入学。以後、国内外で活躍する女性の写真家、杉浦邦恵の作品は主に、フォトグラムという、カメラを使わずに写真紙に直接被写体を置き露光させて像を結ばせる技法を用いています。杉浦は1999年に"Art in America"の表紙を飾るなど、米国の主要なマスコミに取り上げられ、2002年に"New York Times"に展評が掲載された翌日には世界中から作品に注文が殺到した事からも、その人気と実力を伺い知る事ができます。

モノクローム、もしくは1色か2色のトーニングを施した今までの作風と異なり、今回はフォトグラムを応用したカラー写真を展示。色彩による実験をご覧頂ける展覧会となります。

百合やチューリップ、生まれたての子猫、近くのチャイナタウンから入手した烏賊や鰻など、被写体には生命体が選ばれ、自然の持つ偶然性がもたらされる事で、フォトグラムは時間の移り変わりまで記録。

1999年以来、人物を撮影した<アーティストの書類>シリーズでは、ジャスパー・ジョーンズ、篠原有司男、草間彌生などのアーティスト、<サイエンテイストの書類>では、DNA研究者たちのシルエットと、そのアイデンティティをも捉えようとして来ました。

それらは、「噂をすれば影」というように遠まわしに本人を暗示するような、影が持つ「精神性」に由来するかもしれない、今流行りの「ファッショナブルな禅」で言えば'無のポートレート'だと杉浦は言います。

近年、ほとんど黒一色の影による<アーティストの書類>シリーズの発表が続いてきましたが、今回は一転して「色」。

展覧会によせるコメントとして、「DNA構造は美しい。それはシンプルだから。シンプルはより多くとコミュニケーションできるから」(Dr. James D. Watson --- 1953年にDNAの構造を発見した、科学者の一人)「今、この世界にいる生物の全て-アミーバ、猫から人間にいたるは、3億年の生命が、一つずつにつづいている。」(Dr. Gunther Blobel ---ノーベル賞受賞者、科学者)という科学者の言葉を作家は引用しています。

「今回の<Color Works>は40年ぶりに戻ったカラー写真で、光による影から、光による色に移った。言語と違い、誰にでも知覚されるのに、時代、国や宗教により、色は複雑な作用をしてきた。」ともコメント。

一つの要素<光>から派生した個々の要素<影><色彩>は杉浦の考察の中で作用しあい、鮮やかなカラーとスパークを生み出しました。どうぞご期待下さい。

 <cosmos falls> 2006 98x74cm タイプCプリント
 

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30.5 x 27.5 cm

 

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